白木の箱(2010/1/20)
Learn to be free.
Do not imprison yourself.
Do not hedge yourself around
and refuse to allow new insperation
to come to you.
Truth is the constant search.
Its boundaries are ever widening,
for as the soul evolves the mind responds.
"TEACHING OF SILVER BIRCH"
edited by A.W.Austen
自由である ということが
どういうことであるかを
悟らねばなりません
魂を牢に 閉じこめてはいけません。
周囲を垣根で 取り囲み、
新しい インスピレーションを
拒絶するようなことを
してはいけません
真理の道は
永遠に尽きることない探求です
その境界線は 無限に広がり続けます
魂が進化するほどに
精神も それに反応していくものです
「シルバーバーチは語る」
A.W.オースティン編/近藤千雄 訳
*******************************
『白木の箱』
妹は はしゃぎまわっていた。
母は 目を真っ赤に泣き腫らしていた。
土曜日の早朝だった。
たくさんの人が
ウチに来てくれて
賑やかになって嬉しい
それは幼い妹の
単純な しかし哀れな喜びだった。
8歳の夏、夜中に 突然うめき声をあげ
苦しみだした父は 脳溢血で
そのまま帰らぬ人となり、
母は29歳の若さで 未亡人となった。
まわりの大人は
みな嘆き悲しんでいたが、
布団に寝かされた父の顔を見て
「ここにあるのは、ただの抜け殻なのに。
魂はもうここにないのに……。
どうしてみんな、そんなに悲しむのだろう」
私はそんなことをぼんやりと考えていた。
父の鼻や耳には
脱脂綿が つめられ
触れた額は 氷のように
冷たかった。
訪れた大勢のイトコや妹と私は
子供部屋で遊んでいたが、
1時間に一度は父が眠る
八畳間に戻ってきて、
少し高い台の上に置かれた
蝋燭に 背伸びして
線香をかざし
火をつけ 父の霊を弔った。
ドライアイスに 身を囲まれた父は
通夜のときも 布団に寝かせられたままだったが、
いつのまにか部屋の片隅には、
カラの大きな白木の棺が置かれていた。
その晩 私は叔母の膝の上で
いつのまにか ぐっすり眠り込んでしまったが、
目を覚ますと
父はすでに その大きな
白木の箱の中に入っていた。
亡くなる1週間ほど 前に
家族でデパートに行ったとき、
父は ある革のベルトに目をとめた。
それが たいそう気に入り
買おうとしたが、給料日の前だったので
金曜日まで待つことになった。
しかし母は 何かの理由で
その日 デパートへ行くことができず、
父にあやまり 来週まで待ってくれるよう頼んだ。
そのとき父は
「いや、いいんだ。
でも間に合わなかったな……」
とポツリこぼしたという。
その土曜日の午後、
私と母が いっしょにデパートで買ってきたベルトが、
今は棺に納められ 胸の前で合掌した
父の手元に添えられていた。
父の骨は白かった。
前日まで 何の健康上 問題もなく
普通に暮らしていたのだから、
衰弱して亡くなった人々とは違い、
その骨はガッシリとしたものだった。
革のベルトのバックルの部分を
灰の中に見つけた私は、それもいっしょに骨壷
の中に入れてあげた。
あれほど 大きかった父の身体は
こんなにも 小さくなってしまった。
しかし骨壷に納められた
その身体は 今は
とても 温かだった。
*****
亡くなってしばらくして、
学校で 社会科見学のようなものがあった。
町外れにあった 大きなゴミ焼却場を見学して
家に戻ってきた私は、
母とそのときちょうど家を訪れていた叔父に、
今日学校でこんなことがあったんだよと報告し、
最後に「思い出しちゃったよ……」と
ボソッと つけ加えた。
「何が……?」
「いいから言ってごらん」
叔父と母にせかされた。
「お父さんが焼かれたときのこと……」
「今日、隙間から火が見えたんだよ」
5分か10分ほどして、
私はテーブルの陰で 母が叔父の膝に突っ伏し、
ほろほろと 泣いていることに気づいた。
母はその晩 半狂乱になった。
母が一番頼りにしていた
すぐ上の姉に電話がかけられた。
叔父は「ミツコが悪いんだぞ」と言った。
憑かれたように泣き続け、
叔母から子供のようになだめられ
ベッドに寝かされる母を見ながら、
私もぽろぽろと泣いた。
*****
父が亡くなってから、
毎日夕方になると 妹と母の3人で
墓参りをした。
お墓にある水道の水じゃ、
お父さんがかわいそうだから、
と家からヤカンに水を入れ
毎日持っていき、
まだ新しく土が盛られただけの
墓の石の上に水をかけてあげた。
線香に火をつけるときになると、
妹は 保育園で習ってきた
「燃えろよ、燃えろ」の歌を歌った。
線香に火がつき、なかなか炎がおさまらないと、
これはね、お父さんが喜んでるんだよ……
と妹は言った。
ある夕方、墓を訪れた
私達3人は ぎょっとしてしまう。
その土の上を十字を切るようにして、
縦に横に幅10センチほど、土がぼこぼこと
気味悪く盛り上がっていたからだった。
お父さんが、
なんか怒ってるのかな……
妹は言った。
しかしそれは、酒の好きだった父に
給料日前、死ぬ前に存分に酒を飲ませて
やれなかったことを 深く悔いた母が、
その丸い墓石の上に毎日酒をかけたことで
モグラがやってきて、トンネルを掘ったことにより
できたものだと判明した。
それから母は 墓石に
酒をかけることをやめた。
*****
写真の中で 微笑む父は、
ずっと39歳で止まっている。
私は 母や妹とはあまり似ていない。
私は非常に身体の弱い子供だった。
そして深く深く父に愛された。
父が亡くなって1ヵ月ほどして
私は肺炎にかかり、病院に行くのがあと1日
遅れていたら手後れだったと言われた。
周囲の人々が、ミツコのことを
うんとかわいがっていたから、
きっと心配で 心配でしょうがなくて、
いっしょに 連れていきたかったんだろうね……
と話していたことを
今は 思い出す。
MITSUKO
..。o○☆*゜¨゜゜○☆*゜¨゜゜・*:..。*:..。o○☆*゜..。o○☆*゜¨゜゜゜○☆*゜¨゜゜・*:..。*
★書き続けていく大きな励みになります。
↓ 応援クリック、どうぞよろしくお願いします♪

にほんブログ村

..。o○☆*゜¨゜゜○☆*゜¨゜゜・*:..。*:..。o○☆*゜..。o○☆*゜¨゜゜゜○☆*゜¨゜゜・*:..。*
Category : Myself (自己)
ピュアさん
心に深く深く沈んでいく
煌めく言葉が つまった
素敵な「ソウルメイト」の詩を
ありがとうございました!!
まず 思い起こしたのは、
「君に捧ぐ」にも書いた
亡くなった前の夫です。
アメリカ人とか日本人、
人種という枠を超え
男とか女とか 妻とか夫とか
そうした枠も 超えて
あるときは、師であり
父、兄のようでもあり、
本当に 親友、戦友のような人でもありました。
実はちょうど 昨日の晩、はづき虹映さんの「シーソーの法則」
という本を、一気に読み、ぼろぼろ泣いてしまいました。
ピュアさんが書いてくださった 「ソウルメイト」の詩と
シンクロしている部分がたくさんあって 今おどろいています☆
真のパートナーシップについて 書かれた小説なのですが、
なんでこんなに泣けてしまうんだろうと自分でも不思議に
思うほど、ひとり ふとんの中で夜中 ボロボロやってました(苦笑)
きっと それは シンプルな言葉のなかにも
人の魂の琴線に触れる 何か本質的なメッセージが
こめられているからだと思いました。
そして、あらためて 両親、子どもたち、現在の夫に、
最後に 今も見守ってくれている先に逝った前の夫に、
深い感謝をささげました。
ピュアさん、いつも応援してくださって
本当にありがとうございます……☆
心に深く深く沈んでいく
煌めく言葉が つまった
素敵な「ソウルメイト」の詩を
ありがとうございました!!
まず 思い起こしたのは、
「君に捧ぐ」にも書いた
亡くなった前の夫です。
アメリカ人とか日本人、
人種という枠を超え
男とか女とか 妻とか夫とか
そうした枠も 超えて
あるときは、師であり
父、兄のようでもあり、
本当に 親友、戦友のような人でもありました。
実はちょうど 昨日の晩、はづき虹映さんの「シーソーの法則」
という本を、一気に読み、ぼろぼろ泣いてしまいました。
ピュアさんが書いてくださった 「ソウルメイト」の詩と
シンクロしている部分がたくさんあって 今おどろいています☆
真のパートナーシップについて 書かれた小説なのですが、
なんでこんなに泣けてしまうんだろうと自分でも不思議に
思うほど、ひとり ふとんの中で夜中 ボロボロやってました(苦笑)
きっと それは シンプルな言葉のなかにも
人の魂の琴線に触れる 何か本質的なメッセージが
こめられているからだと思いました。
そして、あらためて 両親、子どもたち、現在の夫に、
最後に 今も見守ってくれている先に逝った前の夫に、
深い感謝をささげました。
ピュアさん、いつも応援してくださって
本当にありがとうございます……☆
こんにちは。
MITSUKO さんのコメントを読んで思い出した過去の詩。
昨年の2月のものです。
最初はさらにその前の年。
大切な言葉なので、同じ詩を2度載せたり。
パートⅡを綴ったりしながら3~4回ほど。
自分のブログからで恐縮ですが、ご紹介させていただきますね。
・・・ソウルメイト・・・
遥か彼方の 記憶を辿る
いつどこで どんな風に
キミと繋がって いたのだろうと
DNAの
かすかな記憶だけを 頼りに
いまボクは
眠っていた感情を 呼び起こす
暗闇の中から 射し込む
ひとすじの光
あのときも
たしか こうだったね
そこから
静かに 差し伸べられた
キミの輝く左手に
蒼白く細い ボクの右手が
引き寄せられる
温かなぬくもりと
柔らかな手触りに 包まれて
あの日ボクタチは
ここに確かに
存在していた
ソウルメイト
何億何千年前からの
悠久の時を経て
いまここで ふたたび
キミとめぐり合う
もう
どんなことがあっても
ボクの手を 離したりはしないよと
心も魂も 離したりはしないよと
砕け散った ボクの魂を
一つ残らず 拾い集め
キミはこうして ボクのもとへ
時を越え
男女を越え
恋を越え
愛をも越え
すべてを越えて
求め合う
神が決めた魂の出逢い
ソウルメイト
たとえこの世で
離れ離れでも
いつかまた巡りあう
そんなものたちが存在する
MITSUKO さんのコメントを読んで思い出した過去の詩。
昨年の2月のものです。
最初はさらにその前の年。
大切な言葉なので、同じ詩を2度載せたり。
パートⅡを綴ったりしながら3~4回ほど。
自分のブログからで恐縮ですが、ご紹介させていただきますね。
・・・ソウルメイト・・・
遥か彼方の 記憶を辿る
いつどこで どんな風に
キミと繋がって いたのだろうと
DNAの
かすかな記憶だけを 頼りに
いまボクは
眠っていた感情を 呼び起こす
暗闇の中から 射し込む
ひとすじの光
あのときも
たしか こうだったね
そこから
静かに 差し伸べられた
キミの輝く左手に
蒼白く細い ボクの右手が
引き寄せられる
温かなぬくもりと
柔らかな手触りに 包まれて
あの日ボクタチは
ここに確かに
存在していた
ソウルメイト
何億何千年前からの
悠久の時を経て
いまここで ふたたび
キミとめぐり合う
もう
どんなことがあっても
ボクの手を 離したりはしないよと
心も魂も 離したりはしないよと
砕け散った ボクの魂を
一つ残らず 拾い集め
キミはこうして ボクのもとへ
時を越え
男女を越え
恋を越え
愛をも越え
すべてを越えて
求め合う
神が決めた魂の出逢い
ソウルメイト
たとえこの世で
離れ離れでも
いつかまた巡りあう
そんなものたちが存在する
ピュアさん
いつも応援をありがとうございます<m(__)m>
そして 心に深く響くコメントを
ありがとうございました。
> 自分のいのちよりも
> 大切に思うわが子を
> 一緒に連れてったりしないんだと
> 思います。
本当に――そうですね。
寿命といってしまえば それまでですが
あまりにも急で、まだやり残したことも多く
当時 深く抱えていた想いもあったので、
妻や幼い子供たちを残して先に逝くことは
さぞかし無念だっただろうなあと思います。
> あと一日遅かったら。
そうですね(^^)
きっと そのとき、父は後ろで
「ああ、その病院じゃ、ダメだ、
病院 変えないと、だめだよ」とか
最初の病院での誤診も わかっていて
私や母に声をかけてたかもしれないなあと思いました。
父の死は、わたしの人生のなかでは
まだまだ 最初のひとコマで
その後 本当にいろんなことがありました。
でも、つい2,3日前でしょうか
ある本を読んでいて、ああ、私は やっぱり
この父と母を選んで 生まれてきたんだよなあと
強く感じる出来事があり、改めて深い感謝をささげました☆
MITSUKO
yassepochiさん
コメントありがとうございます!
父の思い出、長くなってしまいましたが、
読んでくださって ありがとうございました。
私自身 父が逝った年を とうに迎え
あれから30年以上も たつのですが、
今日ふっとこの作品の中に書いた当時の様子が
今までになく鮮やかに 浮かびあがってきました。
まるで 時を超えて その時代にワープして、
今そこに自分がいるかのような感じがしました。
いつも応援ありがとうございます!
yassepochiさんのブログに わたしも
できる限り ご訪問させていただいて
拍手や応援ポチッさせていただいてるのですが
心に じわ~んと しみこむ
yassepochiさんの日記や詩を
読ませていただいて 行間に感じるもの、
うらやましいなあ~と 思うのは
奥さまやお嬢さんとの なんともいい和やかな
心許した温かな関係です☆
わたしは、養父が二人いるのですが、
父親とそういった関係を築きたかったなあと思います。
short story にトラックバック
させていただきますね(^^)。
これ、short story と言えるかな~~
と 判断つきかねたので
まだ してませんでした。
いつも本当にありがとうございます!!
MITSUKO
コメントありがとうございます!
父の思い出、長くなってしまいましたが、
読んでくださって ありがとうございました。
私自身 父が逝った年を とうに迎え
あれから30年以上も たつのですが、
今日ふっとこの作品の中に書いた当時の様子が
今までになく鮮やかに 浮かびあがってきました。
まるで 時を超えて その時代にワープして、
今そこに自分がいるかのような感じがしました。
いつも応援ありがとうございます!
yassepochiさんのブログに わたしも
できる限り ご訪問させていただいて
拍手や応援ポチッさせていただいてるのですが
心に じわ~んと しみこむ
yassepochiさんの日記や詩を
読ませていただいて 行間に感じるもの、
うらやましいなあ~と 思うのは
奥さまやお嬢さんとの なんともいい和やかな
心許した温かな関係です☆
わたしは、養父が二人いるのですが、
父親とそういった関係を築きたかったなあと思います。
short story にトラックバック
させていただきますね(^^)。
これ、short story と言えるかな~~
と 判断つきかねたので
まだ してませんでした。
いつも本当にありがとうございます!!
MITSUKO