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この小さな温かき手を握りながら――自閉症、発達障害ってなに?

Posted by ミツコ (MITSUKO) on 04.2011 0 comments 0 trackback

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                 石垣りん

夜ふけ、ふと目をさました。

私の部屋の片隅で
大輪の菊たちが起きている

明日にはもう衰えを見える
この満開の美しさから出発しなければならない

遠い旅立ちを前にして
どうしても眠るわけには行かない花たちが
みんなで支度をしているのだ。

ひそかなそのにぎわいに。





Flowers
                   Ishigaki Rin


In the middle of the night, I awake.
There in the corner of my room,
the chrysanthemums stand alert.

Tomorrow, their big blossoms will show
the first signs of decline --- the beauty
of full bloom is their starting point ---
and with such a long journey ahead,
they have no time for sleep,
absorbed in making preparations.

Their stillness is alive.


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この小さな温かき手を握りながら――自閉症、発達障害ってなに?



握ろうと思えば 
キミの手はいつもそこにあった



意識せずにいつも握っていたから
今日はことさら意識して 
握ってみたくなったのだ



キミはいまゆっくりと立ち上がり
キミの人生を歩み出そうとしていたから



いつだって日常の道端で
ふんづけられた「当たり前の種」と
忘れかけた遠い記憶
なぜ わたしたちは この世に生れてきたのかを


キミはハハに
たくさんたくさん
想い出させてくれたから



わたしたち ひとりひとりが
天と地をつなぐ 光の柱となれと―― 



     *     *     *     *     *




「簡単に言えば 自閉症でしょう」と
医師が言い放った言葉を



そんなこと
簡単に言ってのけてくれるなと
半ば憤慨しながら
ハハは聞いたのだ 



つとめて感情をいれず
対応しようとしている医師の前で



いっそ己が感情のままに取り乱し
この場で泣き崩れてやったら
少しはラクになるだろうかと思ったのだ





キミは歩くのが遅かった
他の子はみな1歳前後に立ち上がり
歩き出すというのに
そのころキミはまだ おすわりさえも 
うまくできなかった



キミのねえちゃんだって うまれたときに 
それはそれはいろいろあったけれど 



ねえちゃんは生後11カ月でむんずと立ち上がり
1歳の誕生日には ばあちゃんたちの声援を受けながら
一升餅を背負い 転んでも転んでも立ち上がり
歩いたことを思うと キミの発達は 明らかに遅れていた



発達障害
だからそれが なんだと いうのか





キミを産んだときも 
ねえちゃんを産んだときも
ハハは出産直後に 出てくるはずの
胎盤が出てこなくて ひどい感染症になり
死にそうになった




容体はますます悪化し
そして子宮全摘出の緊急手術
その朝も病室から見える空と海は
どこまでも青く澄みわたっていた



キミのチチが仕事で来れないのは
最初からわかっていたけれど



頼みにしていた ばあちゃんたちも 
すこし遠くに住んでいたから
急に早まった 手術開始時間に間に合わなかった



でも心ある看護婦さんが
まだ白い産着につつまれたキミを
新生児室から抱っこして
ハハの病室につれてきてくれたの



だから キミひとりだけ
エレベーターの向こうに消える
ハハを見送ってくれたんだよ



そのキミの あたたかで 
穢れなき魂と瞳の 応援を受けて
ハハが どれだけ心強かったか
嬉しかったか 一生忘れないだろう


そして キミが 10日前まで 
はいっていた子宮は 
ハハの体から切り取られ
天国へと旅立っていった




4カ月検診 
おっぱいやミルクを飲んでも
体重が増えないキミ



キミの足は生まれたころから細かった
ばあちゃんが 「赤ちゃんなのに ほんとに スマートで 脚が長いね」
と カエルのシャツが トレードマークだったキミを 
あたたかなまなざしで よく褒めていたのを思い出す



10カ月検診
まだお座りもできなく
先生が抱き上げても 
他の赤ちゃんのむちむちした脚とは違う
キミのか細い脚は宙に縮こまったまま



いつもは 楽観的な先生も
「おかあさん……これは 
 ちょっと問題があるかもしれません……」と
顔を曇らせて 大きな病院を紹介された



そして 小児神経科という 
今まで聞いたこともなかった
大きな病院の科に通うようになる



そこで1歳の誕生日を過ぎたころに
たくさんの血液検査やMRIの検査も受けたね



赤ちゃんでも こんな検査を受けることは可能なんだと
地下にある 冷やかなコンクリートに囲まれた
奥まった部屋につづく長い廊下で 
キミとふたり 名を呼ばれるのを待った



眠り薬を飲まされても一向に寝らず グズるキミを
ずっとあやし続けながら 
ハハは不思議と落ち着いていた




当初 疑われた
プラダー・ウィリー症候群という遺伝子疾患や
その他の 先天性な筋疾患や脳疾患などは 
見つからなかったが



生まれつき 筋肉の発達に問題がある
知能の面でも遅れがあるかもしれないと言われ 
今はもうこれ以上 検査もできないからと
経過観察の身となる



必要だったとはいえ
別室で ギャーギャー泣き叫び 
トラウマになるぐらい か細い手足から
血を採られるキミに 
かわいそうなことをしたと
ハハは心の中で詫びた



1歳9カ月
キミは テーブルの上に 上半身をあずけ
か細い脚の膝を 力いっぱい 
まっすぐに伸ばして 立ち上がった



キミが自らの二本の足で立ち上がり 
歩きだしてから もう2年
もうすぐ 保育園の年少組のおにいさんになる



もうすぐ4歳になるのに
知能面では 2歳前半だと
医師は告げた



発達障害
だからそれが なんだと いうのか




医師の言葉によれば
多動はないものの
こだわりが強く 人とかかわることが
ひどく苦手だというキミが



「ママ だぁいしゅき」といいながら
満面に笑みを浮かべ 
顔をこれでもかと すりよせてくるとき
ハハは 深い至福感につつまれる



キミはキミのままでいい
いまゆっくりと歩きだしていく



キミと空を見上げるとき
キミの大好きな飛行機が
いつも白い雲をたなびかせ 飛んでいる



それはメッセージなのだ



すべては「いまここ」に
すでに在るから




ハハは この世に起きるすべてのことを
受け容れようと思うんだ



事実は事実として 
ただ淡々と静かに 受け容れる


そして 奇蹟を起こす




キミのあたたかな手を握りながら
空を見上げ



きょうハハは 
そんなことを思っていたんだよ





ミツコ 
MITSUKO



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